判決事例集
全国環境整備事業協同組合連合会
顧問弁護士 浅井 正
- 1.「業として行う」
- 反復継続の意思をもって一定の行為を行うことを意味し、それが営利の目的でなされることは必ずしも必要ではなく、また相手から対価を受けたか否かをも問わないと解すべきものである。
- (昭和51年(わ)第2571号・第3351号等、同54年7月31日 大阪地裁判決)
- 2.「許可の法的性質」
- 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(平成3年法律第95号改正前) 第7条第1項に規定する一般廃棄物処理業の許可は、要件審査の点で自由裁量行為である。
- (昭和56年(行ウ)第7号〜第9号、同57年12月21日 福岡地裁判決)
- 3.「き束裁量行為」と「自由裁量行為」
- 行政行為は、すべて法規に基づき法規にしたがってなされるものであるが、その法規による「き束」の程度、態様は画一的ではない。一般に、自由裁量行為は、行政庁に一定範囲の自由裁量を認めてなされる行為であり、き束裁量行為は、行政庁に裁量の余地のない行為であるとされているが、両者は本質的に異なるものではなく、いずれも、ある程度に法規の「き束」を受け、反面、ある程度の裁量が認められるのであって、両者の差異は究極的には程度の差であるというのが通説である。
- (廃棄物処理法の解説 昭和47年4月20日初版)
- 4.「許可制度」
- 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(平成3年法律第95号改正前)第7条の許可制度は、生活環境保全上の支障を生じさせないために、市町村が責任をもって定めた一般廃棄物処理計画との調整を図ることを目的として、一般廃棄物処理業の営業を一般的に禁止し、前記計画遂行上必要が認められたり、前記計画との整合性が確保される場合に、この禁止を解除するといういわゆる計画許可の制度であり、同許可については、同条第2項第1、2号の許可要件該当性の認定判断に関し、行政庁に相当範囲な裁量権が与えられているが、同条同項各号の許可要件に適合していると認められるにもかかわらず許可をしないといういわゆる効果裁量は認められないと解するのが相当である。
- (平成3年(行ウ)第15号、同年11月29日 名古屋地裁判決)
- 5.「営業上の利益」
- 許可制は、廃棄物を適正に処理し、及び生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図る(同法第1条)という公益的見地からその行政目的実現のためなされる規制であるといわなければならない。そして、これより進んで、既設業者の営業上の利益を保護していることをうかがうに足りる規定は、廃棄物処理法その他関係法令を精査してもこれを認めることができないところである。したがって、既設業者が許可によって享受する営業上の利益は、廃棄物処理法その他関係法令により保護された利益ということを得ず、それは、行政法規が他の目的、特に公益実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果、たまたま一定の者が受けることとなるいわゆる反射的利益に過ぎないと解するのが相当である。
- (昭和53年(行ウ)第31号、同55年6月18日 広島地裁判決)
- 6.「汚物取扱業に対する許可」
- 清掃法第15条所定の汚物取扱業に対する許可は、法規裁量たる警察許可ではなく、市町村長の自由裁量による処分と解すべきである。
- 現在市町村自体が全区域に亘ってすべて直営で処理を行うことができない場合があるため、一部においては市町村の行う作業の代行を私人に行わせる必要が生じてくるのであって、ここに汚物取扱業者の介在を許さざるを得ないことになるのであるが、清掃法に定める汚物取扱業者もかかる性格以外のものではないから、同法は汚物取扱業者に対し各種の面において規制を加え、市町村が直営する場合と同様の効果を確保しようと試みている。
- (昭和31年(行)第4号、同33年5月31日 横浜地裁判決)
- 7.「一般廃棄物収集業務委託」
- 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第6条3項に定める、市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外のものに委託する行為は、市町村の固有事務、すなわち市町村の処理すべき本来の行政事務を私人に委託するという行為であるから、公法上の契約であることは明らかである。したがって、契約については、地方自治法第223条の規定は適用されないものと解される。
- これをより実質的な観点から考えてみると、地方自治法第223条は契約締結の方法として一般競争入札を原則としているが、これは、第1に契約事務の執行の公正を確保し、第2に地方公共団体と契約する機会を均等に与え、第3にできる限り地方公共団体に有利な条件で契約を締結して経済性の要請にも応えるという理由によるものであるところ、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」施行令第4条第6号は、同法第6条第3項の規定による市町村が一般廃棄物の収集、運搬、又は処分を市町村以外のものに委託する基準の一つとして、「委託料が受託業務を遂行するに足りる額であること。」と定めており、廃棄物処理法は、一般廃棄物の収集等の業務の公共性にかんがみ、経済性の確保等の要請よりも、業務の遂行の適正を重視しているものと解される。すなわち、廃棄物処理法は、最低価格の入札と契約を締結する一般競争入札の制度とは異なる建前をとっているのである。
- 廃棄物処理法は、一般廃棄物の処理業務を委託する場合の基準として、受託者の資格要件、能力、委託料の額、委託の限界、委託契約に定めるべき条項等について詳細に規定し、基準に則り、委託業務が適切に遂行されることを予定しているものであって、基準においては契約締結の方法については何ら触れられていないが、それは地方自治法第223条の適用を前提としているからではなく、契約締結の方法を一般競争入札、指名競争入札又は随意契約のいずれにするかは市町村の裁量に委ねている趣旨と解するのが相当である。
- (昭和53年(行コ)第2号、同54年11月14日 札幌高裁判決)
- 8.「一般廃棄物収集運搬業の許可」
- (1)一般廃棄物処理計画は、廃棄物の適正な処理およびこれを実施する実施主体を定める者である。そうすると、既に許可を受けている業者によって、廃棄物の適正な収集、運搬が行なわれてきていて、これを踏まえて一般廃棄物処理計画が作成されている場合に、市町村長が新たな許可申請を審査する際に、一般廃棄物の適正な収集、運搬を継続的かつ安定的に実施するためには、既存の許可業者のみに引き続き行なわせることが相当であるとして一般廃棄物処理計画に適合しないことを理由に許可申請を却下することもできる。
- (平成14年(行ヒ)第312号、平成16年1月15日 最高裁判決)
- (2)一般廃棄物の処理(収集、運搬、処分)は市町村の責務に属するものであり、本来的には、市町村が一般廃棄物処理計画に従って自ら又は委託の方法によりこれを処理すべきものであって、業者がこれと並行して一般廃棄物の処理を営業として行うとすれば混乱が生ずることとなることから、これを一般に禁止するとともに、市町村が自ら又は委託、代行の方法によって一般廃棄物の処理をすることが困難である場合に限り、その禁止を一部解除して、所定の要件を充たした業者が一般廃棄物処理の営業をすることを許可することとしたものであるが、その場合であっても、一般廃棄物の処理の事務が市町村の責務であり、市町村は、混乱なくその事務を達成しなければならないことはもとより、総合的かつ将来的な見地から策定した一般廃棄物処理計画を実現しなければならないことに変わりはなく、そのため、特に一般廃棄物処理計画に対する適合性が廃棄物処理業の許可要件とされたものであると解することができる。
- (平成5年(行ウ)第5号、平成8年11月22日 静岡地裁判決)
- 9.「浄化槽清掃業の許可」
- 浄化槽清掃業の許可の制度は、不適格な業者を排除して生活環境を保全する上で支障を生じさせないようにすることを目的とするいわゆる警察許可の性質を有するものと解され、浄化槽の清掃の結果、必然的に生ずる汚泥を収集、運搬することは一般廃棄物の処理に当たるものであるから、浄化槽清掃業の許可申請者が自らこれを行おうとする場合には、一般廃棄物処理業の許可を受けることが必要である。
- 浄化槽の清掃の結果生じた汚泥の処理であるとしても、一般廃棄物の処理である以上、その処理の事務が市町村の責務であり、市町村は、混乱なくその事務を達成しなければならないこと、また、その処理の事務を含めて当該市町村の一般廃棄物処理計画を実現しなければならないことに何ら変わりなく、一般廃棄物処理計画に対する適合性という一般廃棄物処理業の許可要件の判断が市町村長の広範な裁量に委ねられていることも、なお合理性を失わないというべきである。
- 申請者が、一般廃棄物処理業の許可を伴わないこととなった場合に、浄化槽清掃業の許可要件の存否、特に浄化槽法第36条第2号ホ所定の事由に該当するかどうかは、申請者と廃棄物処理法第7条許可業者との間の業務委託契約の有無やこれに対する評価を含めて、専ら、浄化槽法の規定に基づいて判断されるべき事柄であって、結果的に、浄化槽法第36条第2号ホ所定の事由に該当するものとして、申請者に対し、不許可処分がなされたとしても、一般廃棄物処理業の許可に係る法理により浄化槽清掃業を規制したとか、警察許可たる浄化槽清掃業の許可の性質に反しその許可制度を没却するものとかということはできない。
- (平成5年(行ウ)第5号、平成8年11月22日 静岡地裁判決)